「なんで獺祭ってあんなに美味しくて、有名になっていったんだろう?」
ふと、山口県出身の私はそう思いました。今回は山口県の有名な日本酒『獺祭』の美味しさについて徹底的に調べてみましたので紹介していきます!
目次
獺祭が生まれた地・山口県岩国市
獺祭は山口県のどこで造られているかご存じでしょうか?獺祭は山口県の東側、広島県との県境にある「岩国市」というところで造っています。
岩国市の観光名所の1つに「錦帯橋」があります。一度はテレビやなにかで見たことあるのではないかなと思いますが、アーチが連なった木造の橋です。
実はこの橋は釘を一本も使っておらず、木を組んで作られた橋で日本三名橋の一つにもなっています。木を組んで作った橋のため、台風や大雨などの災害で何度も流されていますが、改良を繰り返していき今の形になっているそうです。
また、岩国の名産のひとつとして「岩国れんこん」があります。穴が普通のれんこんに比べて1個多く(一般的なれんこんは穴が8個で、岩国れんこんは穴が9個あるそうです)、白くて柔らかな肉質と、粘りとシャリシャリした歯触りが特徴の野菜です。
岩国れんこんは農林水産省のサイトにも載っている岩国の郷土料理「岩国寿司」では欠かせない食材となっています。
そんな岩国の市街地から西側に少し離れた山奥に位置する周東町というところの『旭酒造』で獺祭は造られています。
山口の山奥の小さな酒蔵・旭酒造
自然豊かな山奥に位置する酒蔵『旭酒造』で獺祭はどのようにして誕生し、どのようにして今の美味しさになったのか。まずはそれを紹介していきます!
獺祭の誕生までの道のり
旭酒造は元々、200年以上の伝統がある普通酒「旭富士」というものを造って売っていました。しかし、日本酒業界の衰退(1975年から2010年の35年間で販売量が1/3に激減するほど)もあり、売上は伸びず廃業寸前だったそうです。
そんな中、旭酒造の代表の桜井氏は「普通酒を地元で売っているがなぜ売れないのか?」を突き止めていくとあることがわかったそうです。
それが『酔うため、売るための酒ではなく、味わう酒』を消費者は求めているということです。
消費者が求める『味わう酒』を作っていくためには、酒の質を追い求めていくことが大事だと考え、これまで造り続けてきた普通酒を捨てて、大吟醸酒を造り始めたのが獺祭のはじまりのようです。
この消費者が求めていることを実現するために、今まで造り上げてきたものを捨て、徹底的に酒の質を追い求めてきた結果が、今の獺祭の美味しさやブランド力に繋がってるのだと感じました。
「手間」にこだわった獺祭
ここまで有名になった獺祭を作り上げるまで旭酒造が大事にしてきたこと、それが「手間」です。
現代では機械化が進み、効率的にしていくことが正義のように思われている社会の中で、旭酒造は「手間」をかけることを大事にしています。
その証拠に旭酒造は製造数量では日本で10位にも入っていないそうなのですが、製造スタッフの数は大メーカーの倍以上もいるそうです。
ただそれは無駄なことに人手と時間をかけてしている訳ではなく、徹底的にデータ化された現代の検証技術を使った上での「手間」を大事にすることで、獺祭の美味しさが生み出されたのだと思います。
(ITエンジニアとして働く自分にとってはこの部分は深く突き刺さりました…)
その獺祭の美味しさの秘訣となる「手間」を製造工程ごとに紹介していきます!
美味しさの秘訣は手間をかけた製造工程
獺祭の美味しさの秘訣は「手間」をかけた製造方法にありました。
獺祭は日本酒を造る工程の中で
- 洗米
- 蒸米
- 麹造り
- 仕込み
- 上槽
- 瓶詰
にこだわりがあるようです。それを1つずつ紹介していきます!
◆ 洗米
獺祭を造る際は、まず「精米」で最大144時間かかっており、その長時間に渡る精米時の摩擦熱によってお米が極度に水分失っている状態になるそうです。
そのため、「洗米」という工程に入る前に自然に水分を元の数値に戻すために、1ヶ月以上そのまま貯蔵して水分含有量を回復させています。
そして、「洗米」の工程では洗米後のお米の持つ水分量を0.3%以下の精度で厳密にコントロールするために、通常は大吟醸でだけ使われる技法で全て手洗いで行っているそうです。
既にこの時点で時間と人手がかなりかかっているのが分かりますね。
◆ 蒸米
日本酒の製造工程には「もろみ」という、発酵工程があります。もろみ日数45日間という長い期間の発酵を行うためには発酵力を持ち続ける蒸米を作る必要があります。
そのためには一粒一粒のお米が、外側が硬く内側が柔らかい状態に蒸し上げる必要があり、それを実現するために伝統的な和釜の技法を使用しています。
この和釜を使用した方法は、米の張り込みや蒸し上がったお米の掘り出し等、かなり労力のいる方法のため、ここでもかなり人手がかかっています。
◆ 麹造り
次は「麹造り」という工程です。酒造りの中で最も大事な工程として位置づけられています。
「麹造り」は酵母にブドウ糖を供給し続けて、発酵のスピードをコントロールする工程で、最高の麹を造るためには、全体のお米の状態を把握して、繊細に操作する必要があるそうです。
そのため、一切機械は使わず経験豊富な4人の担当者が交代で深夜、早朝問わずに操作を行い、獺祭の麹を造っているそうです。
この人手をかけて昼夜問わずに麹造りの操作をし続けていることに美味しさの原因が詰まっていますね。
◆ 仕込み
旭酒造の「仕込み」の工程では、全てのもろみに鑑評会の出品酒と同様の低温長期もろみの発酵形態を取っているそうです。
酵母の生存限界の温度が5℃で、そのギリギリの温度から仕込みをスタートさせて、0.1℃の精度でもろみをコントロールしています。
この機械にはできない、コストがかかる原始的な方法を取ることが、質の良い酒造りに繋がっていますね。
◆ 上槽
「上槽」という工程は、酒の善し悪しを決める重要な工程の1つだそうです。
旭酒造ではこの工程で商業ベースでは日本で初めて遠心分離機を導入しています。無加圧状態でもろみから酒を分離するため、純米大吟醸が本来持つ香りやふくらみなどの美点を崩すことなく表現ができます。
これが獺祭のフルーティーな香りや美味しさに繋がっているんですね。
ただ、これも製品の歩留まりが極端に悪いことや機械が高価であること、酒造業者では初めての導入なので初期トラブルがあることなど欠点は沢山あるようで、ここにも色んな「手間」がかかっているそうてす。
◆ 瓶詰
旭酒造の「瓶詰」の工程では、冷温瓶詰方式をとっていて、冷たいまま瓶詰することで香りを逃がさないようにしているようです。
また、酒には36℃あたりに酒を劣化させる温度帯があるようで、ここを急冷方式で速やかに冷却して通過させることで、酒の劣化も防いでいるそうです。
この「瓶詰」の工程は、ホットパック方式(65℃まで上げた酒をそのまま瓶詰)で行えば、設備費は何十分の一になるそうなのですが、温度をあげて瓶詰する過程で香りが逃げてしまうため、コストのかかる冷温瓶詰方式を取っているそうです。
このように、製造工程の最後の最後まで酒の質にこだわって、時間や人手、コストの「手間」をかけていることが獺祭の美味しさに繋がっているんですね!
製造スタッフひとりひとりの意識の高さ
酒蔵は通常、杜氏と蔵人の支持を元に酒造りをするのが主流ですが、旭酒造は社員だけで酒造りをしています。
そのため、各工程の製造スタッフひとりひとりが旭酒造のこだわりである『味わう酒』を意識して取り組むことができ、この質の高い酒造りが実現できているのだと思います。
酒造りに限らず、自分で考えて動くことが最高のものを作り上げる秘訣ですね!
獺祭の銘柄紹介
そんな質にこだわった獺祭の中で飲んだものや気になっている銘柄について紹介していきます!
獺祭 純米大吟醸 磨き三割九分
まずは飲んだものから紹介します。
『獺祭 純米大吟醸 磨き三割九分』は、その名の通り山田錦を39%まで磨いて造った銘柄です。
獺祭のフルーティーな香りはもちろんのこと、華やかできれいな甘みがあり、バランスが取れた日本酒です。The 純米大吟醸というような美味しさです!
獺祭 純米大吟醸45
『獺祭 純米大吟醸45』は、色んなところでよく提供されているスタンダードな獺祭です。
山田錦を45%まで磨いて造っており、本来の甘みや華やかな香りが特徴の銘柄です。1番お手ごろな値段なので、ぜひ手に取って飲んでみてください!
獺祭 純米大吟醸45 にごりスパークリング
『獺祭 純米大吟醸45 にごりスパークリング』は、他とは違ってスパークリングの銘柄です。
発酵する過程でできた炭酸ガスのため、心地よい刺激でシュワシュワ感のある口触りです。また、にごり酒なので他の銘柄と比べると、華やかな香りに加えて甘みがあり、とても美味しい銘柄でした!
獺祭Blue Type23
最近、気になっている獺祭の銘柄『獺祭Blue Type23』です。
この獺祭Blueシリーズは、山口県ではなくニューヨークに新しく建設した酒蔵で造ったブランドです。
獺祭Blueのコンセプトは日本のことわざ「青は藍より出でて藍より青し」からとっているそうで、「日本で作られるオリジナルの獺祭を超える」という思いが込められているそうです。
まだ飲んだことはないですが、日本で作る獺祭の香りや味を再現するのではなく、ニューヨークの環境で造る最高の酒を目指して作っているため、日本の獺祭とはまた違った香りや風味を楽しめそうですね!
終わりに
今回は旭酒造の獺祭の美味しさについてたくさん調べてみました!
調べていく中で『味わう酒』を目指した旭酒造の時間や人手、コストの「手間」をかけた酒造りが今の獺祭の美味しさやブランド力に繋がっているのだと知りました。
ユーザーの目線に立って喜ばれるものを提供していくことが大事だと、改めて旭酒造の獺祭について調べて感じました。私もシステムやサービスを作っていくエンジニアとして、必要な「手間」をかけて喜ばれるものを作っていくように心がけていきます!
また、これから獺祭を飲む際はたくさんの「手間」をかけて造った日本酒なんだなと感じながら、しっかり味わって飲みたいと思います!笑
今後も色んな銘柄や酒蔵を調べて紹介できたらいいなと思っているので楽しみに待っていてください!
今回紹介した獺祭をはじめ、他の山口の日本酒を紹介した記事も書いているので、ぜひこちらもご覧下さい↓
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松田賢太(マツケン、すけさん)
フリーランスシステムエンジニア(2023年8月~)
地方グルメや日本酒、ビール中心にブログ投稿しています。
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